第13回 発達障がいの理解
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1. 発達障がいとは
1-1. 発達障がいとは
現在では生得的な脳の機能障害が原因であることがわかっている
複数をあわせ有することも多く、ありようも個人差が大きい
領域によって定義や呼称にばらつき
1-2. 発達障害者支援法における定義
2016年に改正
社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受ける
ものであることが明記された
障害の本質が、個人の特性ではなく、社会的環境との関係の中で生ずる生活上の制限であることが示された
社会的環境の整備を重視
1-3. 精神医学における定義
5. 特定不能の広汎性発達障害
「神経発達症群/神経発達障害群」
7. 他の神経発達症群/他の神経発達障害群
典型的には発達早期から学童期に明らかになること、個人的、社会的、学業、職業等における支障があること、しばしば依存症を伴うこと、などが発達障害をとらえるポイント(岡, 2016) 知的障害・自閉スペクトラム症・注意欠如・多動症が同じカテゴリーにおいてとらえられるようになったこと
「アスペルガー障害」が診断名から消失したこと
1-4. 教育行政上の定義
発達障害の定義については、医療上の定義と教育行政状の定義が異なっている
医学的定義と相違がある
立場によって定義が異なる
発達障害が「見えない障害」であり、その診断と対応の難しさを物語るもの
2. 「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」の理解
2-1. 自閉スペクトラム症とは
カナーの症例ほど重くはないが、社会性に困難を有する子どもたちの存在が知られるにつれ、二分法的な捉え方ではなく、自閉症傾向の連続体(スペクトラム)としてとらえたほうが適切であるとされた
2-2. ASDの特徴
ASDの特徴(強弱や対象に個人差あり)
目が合わない、問いかけへの反応がオウム返し、言葉通りに理解してしまい冗談が通じない、相手の気持を読み取ることが難しい等
結果として対人関係の問題を抱えることが多い
特定の領域に深くのめりこむ、キラキラと光る水面やくるくる回る天井の扇風機をじっと見つめて動かない、手をひらひらさせる動作をずっと続ける等
2-3. 高機能のASD
DSM-IV-TRの「アスペルガー障害」
高機能の中でも、言語発達の遅れがなく、コミュニケーションの障害はないが、社会性の課題と興味の限局・こだわりのみがあるタイプ
DSM-5では診断名は消失したが、診断名が亡くなっても同状態の子どもたちが存在することには変わりがない
通常学級に在籍していることがほとんど
適切な理解を得られないまま学校生活において様々な困難を経験していることも少なくない
正しい理解と子どもたちのニーズに対する合理的配慮が必要 3. 「限局性学習症/限局性学習障害」の理解
3-1. 限局性学習症とは
1999年に発出された学習障害およびこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議による「学習障害児に対する指導について(報告)」の定義
学習障害とは、基本的に全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
医学的にはSLDは
話すことや聞くことに関する障害は「コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群」に分類される
3-2. SLDの特徴
幼児期には気づかれないことも少なくない
話し言葉に不自由しないことも多い
小学校に入ってから、他のことには問題がないのに特定のことができない子どもの様子から教師や保護者が気づくことが多い
一方で叱責されることや勉強ができないこだけと片付けられ、適切な配慮が受けられないこともある
子どもの自信喪失や学校嫌いにつながることもある
障害特性が友達からからかわれる原因になることもある
学習場面での失敗経験
教師のみならず、障害に関する正しい知識を多くの人が共有することが、大切な課題となる
学齢期 5~15%
成人では約4%
学齢期だけの問題ではなく、成人してから読むことや意味の理解に多大な労力を費やすこともある(佐藤, 2005) 4. 「注意欠如・多動症/注意欠如・多動障害」の理解
4-1. 注意欠如・多動症とは
発達段階と照らし合わせて考えて、過度の不注意と衝動性、多動がみられる場合
過度の落ち着きのなさについては、欧米では20世紀初頭より小児科領域ですでに取り上げられていた
脳の微細な損傷などが原因となって、注意の集中や行動のコントロールができなくなっていると考えられてきた(田中, 2005) ADHDの診断基準において注意すべき点
該当項目が複数の場面で特筆すべき行動として認められること
社会的・学業的な困難を招いていること
原因については、教師の指導力不足や家庭の教育力の定価など多様な議論が展開した
それまで一般にはあまり知られていなかったADHDのある子どもたちの存在も指摘
支援の対象として大きくクローズアップされるようになったという経緯
文部科学省(2003)のADHDの定義
ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである
また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経に何らかの要因による機能不全があると推定される。
実際のADHDの診断については、上記の教育行政上の定義ではなく、DSM-5を判断基準として診断がなされる
DSM-5においては、年齢の高いADHDの問題を反映
症状発現年齢の下限が7歳から12歳に引き上げられ、
17歳以上の成人に関しては診断基準が緩和されている
ADHDの有病率
小児期で3.4%と高い
ADHDの原因
SLDの同様はっきりとは解明されていない
両薬物の有効率は80~90%といわれるが、薬物がADHDの万能薬ではないことには注意が必要
日常的な行動面・心理面双方においてサポートしていく姿勢が周囲には求められる
5. 発達障害のある子どもへの支援の基本
定型発達とは異なる道筋で発達していく発達障害のある子供への適切な支援 一般的な留意点
感情的に叱らないこと
支持を出す時は一度に一つずつ、かつ具体的にどうすればよいかをはっきり伝えること
理解を促すために適宜絵カードを活用すること等
発達障害のある子どもの状態は極めて多様であり、複数の発達障害を併せ持つことも多い
どの子どもにも有効な、一般的な指導法を確立することは難しい
個々の子どもの発達の状態と障害特性、つまずきについての正確なアセスメントに基づき、目の前の子どもを理解することから始め、その子どもに必要な配慮や援助を、支援機器の活用も含めて個別に考えていくことが肝要
失敗経験を積み重ねることも多く
二次障害を予防するためにも、学校や人との関わりが嫌にならないよう、教師や周囲の支援者は丁寧なかかわりを続けなくてはならない